依存症者とのコミュニケーション・「でも」を使って話す、使わずに話す

今回ご紹介するのは、家族が当事者と接する際のコミュニケーションのあり方を考えるワークです。

対話のなかの「でも」という言葉は、相手の話に対して否定的な意見を出す場合によく使われます。もし、会話のなかで毎回必ず「でも」を使って話した場合、あるいは「でも」を使わずに話した場合、お互いの気持はそれぞれどうなっていくでしょうか?

(1)必ず「でも」を使って話す

このワークは、3人1組で2つのパターンを体験し、ひととおり実践したらそれぞれの役割を入れ替えて実践します。

あるテーマについて、1人(A)が前向きな提案やアイデアを出し、もう1人(B)が毎回必ず「でも」と答えて否定的な意見を言う、というパターンを繰り返します。(C)はそのやりとりを客観的に聞きます。

例えば、「当事者の家族や支援者の拠点をつくる」というテーマで始めると…

「でも」を使って話す

A「ねえ、当事者の家族の拠点を作ったらいいんじゃないか思うんだけど、どうかな?」
B「でも…今までもそんな話があったのに、なかなか実現しなかったじゃない?」
A「家族が気楽に立ち寄ることのできる場所があると、きっといいと思うんだ」
B「でも…当事者の家族はそもそも気楽になんかなれないんじゃないかしら?」
A「一緒に協力してくれる仲間を集めれば、実現できるんじゃないかって思うよ」
B「でも…仲間って、そう簡単には見つからないわ…」
(「でも」は強調して言うようにしましょう)

といった具合です。Aの提案に対し、Bはことごとく否定していくので、Aもつられて「でも…」と言いたくなる場面も出てきますが、ひるまず前向きな話を重ねていくと、Bの方もだんだん苦しくなってくるかも知れません。

(2)相手の話を肯定し、アイデアをつけ加える

写真:セルフサポート研究所・ロールプレイング:ワーク「「でも」を使って話す、使わずに話す」

今度は、Aの提案に対し、Bが「それはいい考えですね」と肯定し、さらに「一つ付け加えていい?」と自分のアイデアを出します。それに対してAもさらなる提案を出していく…というのを繰り返します(テーマは(1)で実施したものと同じです)。

肯定しアイデアを付け加える
A「ねえ、当事者の家族の拠点を作ったらどうかと思うんだけど、どうかな?」
B「それはいい考えだわ!一つ付け加えていいかしら? 拠点をつくるには場所を借りる必要があるから、仲間で手分けして探すのがいいんじゃないかしら?」
A「それはいい考えね!私も一つ付け加えていい? 場所が決まったら、こういう拠点を必要としている人に向けて、チラシやポスターを作ったらどうかな?」
B「それはいい考えだわ!一つ付け加えていいかしら? こういう場所が必要な人はたくさんいるはずだから、一緒に拠点づくりに参加してくれる仲間も増やしていくのが良いと思わない?」
(「それはいい考えだ」は強調して言うようにしましょう)

といった具合です。
Aは自分の提案をBに受け入れてもらって嬉しく感じますし、お互いにアイデアを付け加えて出していくうちに、お互いの間にあたたかい共感が生まれるのを感じ取るかも知れません。

(3)実践して感じたこと、気づいたことを共有する

(1)(2)の体験を終えたら、A、B、Cそれぞれの立場で何を感じたか、どんな発見があったかを話し合いましょう。

(1)のパターンではAの前向きな提案に対してBが問題点を指摘し続けるため、お互いに苦しい展開になりがちです。
ですが、Aにとっては、話を聞いてくれない相手に対して、あきらめずに説得し続けるための練習になりますし、Bが「でも…」と言い続けることで、相手の提案を実現するための課題や問題点が明らかになっていく…という側面もあります。

(2)のやりとりでは、BがAの提案を受け止め、そこに主体的に参加してアイデアを出すことで、主体的に責任の一部を引き受けるという関係が生まれています。
会話のなかで感じた気持ちや、やりとりを客観的に見て気づいたことなどは、家族と当事者の間はもちろん、あらゆる人とのコミュニケーションに役立つことでしょう。

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取材編集:佐藤勝

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