依存症を理解するための10の原則

どんな病気でもそうですが、回復のためには病気についての正しい知識を身につけていくことが大切です。ここでは薬物依存に関する10の原則を載せていますが、他の依存症でもまったく同じ事がいえます。

①自分を自分の意志でコントロールすることができない

 その人のなかに依存が形成されると、その人自身ではなく病気がその人の言動を支配するようになります。ですから「今日はこれくらいでやめておこう」と思ってもそれを守ることができなくなりますし、「もうこれ以上使い続けてもいいことはなにひとつないのだからやめよう」と心にかたく誓ったとしても、それを守ることが難しくなります。

②薬が切れはじめると離脱症状(禁断症状)が現れる

 身体依存が形成されるということは、すでにその物質が体内にあることが普通になっている状態です。そのような状態で急に物質の摂取を中止すると、身体はバランスを失い、様々な離脱症状(手のふるえ、吐きけ、意識障害など)が現れます。ですから、使用中断後に離脱症状が現れるということは、精神依存と身体依存のうち、必ず身体依存は形成されていることを意味しています。
 離脱症状の強さは使用物質によって大きく異なりますが、症状が強い物質の代表はアルコールやヘロインで、覚せい剤やシンナーの離脱症状はそれほど強くなく、周囲の人には見分けがつきにくいかもしれません。

③精神的・身体的・社会的な合併症を伴う

 薬物を使用し続けると、妄想や幻覚などの精神障害、うつ状態などの感情障害が高い頻度で現れるだけでなく、肝臓や腎臓の機能不全、心疾患、神経の異常などの身体的な合併症を伴います。
 また、失職、借金、家族関係の悪化など、社会的障害が目立つようになってきます。

④慢性・進行性で死にいたる病。早期発見・早期治療が大切

薬物依存症の治療をしないで放っていて、気がついたら知らない間に治っていたということはまずありません。また、使い続けている限り、病状がある状態以上に悪くならずに止まっているということもありません。
 これはあまり知られていないかもしれませんが、依存症の人の平均寿命はその他の人々と比較してとても短いといわれています。依存症自体で亡くなることはないとしても、交通事故や合併する身体疾患、自殺などによる死亡率が高いのです。心身へのダメージを最小限にとどめるためにも、早期発見・早期治療が重要です。

⑤遺伝的な体質も関係する

 依存症領域における遺伝性について、それがどの程度その人の発症に強く影響するかなど、詳細なことは今もはっきりとはわかっていません。ただ、遺伝負因がある程度関連する障害であることについては専門家の間で共通の見解が得られています。
 多くの研究がこれまでに行われていますが、その代表的な例は「お酒が飲める人」「お酒が飲めない人」の違いでしょう。
 大量のお酒を飲める人とほとんど飲めない人の間には、遺伝的に体内のアルコールを分解する酵素の量が多いか、それとも著しく少ないかという違いがあります。お酒をほとんど飲めない人はそれだけでアルコール依存症になる可能性が低くなりますから、遺伝は依存症の発症に影響を与えているといえます。けれども、依存症者の子どもが必ず依存症になるわけではないことからもわかるように、遺伝がすべてを決定するわけではなく、むしろ環境要因などのほうが強く影響するものと考えられます。

⑥本人の性格の問題ではない

 「薬物依存症者は意志が弱い」「薬物依存症者はうそつきだ」などという言葉をよく耳にしますが、本人の意志が弱いから薬物依存症になったのでも、うそつきな人が薬物依存症になりやすいわけでもありません。その人のなかにすみついている依存症という病気がその人の意志を壊し、その人にうそをつかせているのです。したがって、そういう悪い性質は依存症の回復が進むうちに姿を消し、徐々にもとのその人らしさが戻ってくるというケースがほとんどです。

⑦回復の基本は完全断薬。治癒はないが回復は可能

 いったん薬物依存症という病気になってしまうと、量を減らして使い続けるということは不可能です。その物質に対するコントロールの喪失というのは、依存症の重要な指標のひとつであることを考えるとそれは当然のことです。
 また、病状がひどいうちは使用をやめ、体調が戻ったら適量を使用しようというのも無理です。一時期回復したとしても、再使用をはじめた瞬間あっという間にこれまででいちばん悪かった状態に戻ってしまうというのが依存症のおそろしいところです。けれども1日1日使用しない日を積み重ねていくことで、ほとんどの機能は回復することが可能です。

⑧予見可能である

 使用物質や頻度、年齢、性別から、病気の悪化や回復の道筋をある程度予想することができます。依存症者自身がそのことを学ぶことはとても大切ですが、本人にその気がないときには、家族や周囲の人だけでも学んでおくと回復を助ける力になります。

⑨ひとりではやめられない

 薬物依存症は、ひとりで克服するのがとても難しい病気です。なぜなら、依存症者は「否認」という感情をもっているからです。そのため、自分が病気であること、また、病気のせいで自分や周囲の人に様々な困難が起こっていることをかたくなに認めようとしません。この否認を解くためには、同じ経験をもつ仲間の声を聞くことが役立ちます。
 また、回復過程で本人はいろいろな苦難に出遭うことでしょう。そのときに支え合う仲間がいることはとても大切です。

⑩薬物が原因のトラブルであっても依存症であることを認めない

 依存症は「否認の病」と呼ばれています。

下の図は依存症において否認が繰り返されるサイクルと表しています。

依存症者はなかなか自分が依存症であることを認めようとはしません。それだけではなく、借金や事故、家族の崩壊など依存症が原因で起こっている様々な問題についても、その深刻さを軽くみたり、ほかの誰かのせいにしたりします。
 依存症になり、依存物質を使い続けるためには、いろいろなことを否認しなければ使い続けることができないからです。回復の鍵は、この防衛という感情を少しずつ解いていく作業ともいえるでしよう。

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家族が依存症の正しい知識を学ぶこと
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