~依存症者と家族を勇気づける言葉~
『僧侶と虎』
僧侶と虎
あるお坊さんが座禅をしていました。そこへ2匹の虎が襲いかかってきました。
お坊さんは食べられるのは絶対に嫌だと思って、死に物狂いで逃げました。
逃げて、逃げて気がついたら絶壁の崖っぷちに立っていました。
喰われるのか、崖から飛び降りるのかを考え、意を決して崖から飛び降りることを選択して飛び降りました。すると、なんと木の枝に引っかかったのです。これはもしかしたら助かるかもしれないと思っていると、枝の先でネズミが木いちごを食べているのが見えました。
それを見てお坊さんは「ああ、あの木いちごが食べたいなぁ」と考えました。
ところが、ふと下を見てみると下にも虎がいるではありませんか。
「ああ、私はやっぱり虎に喰われる運命なのか、それなら木いちごを食べて死のう」と覚悟を決めました。
と、その瞬間、昔木いちごをくれた人のことを思い出しました。そういえば、あの人は病気で今にも死にそうだったなぁ。
それなのに、まだ見舞いに行くこともできていなかった。約束をしていたのに・・・」
と考えているうちに、木いちごのことなどすっかり忘れて
「あの人を見舞わなければ、約束を果たさなければ」という思いに駆られました。
するとその途端、枝が折れて崖の下にズドンと落ちてしまいました。
ものすごい音がして、びっくりした虎は飛び去りました。お坊さんはもう虎のことなどすっかり忘れて、一刻も早くあの人を見舞わなければ、という思いで毅然として歩き出しました。そうしたら、その威風堂々とした姿に虎のほうがすっかり怖気づいてしまい、もう近寄ってきませんでした。